獣医師である僕がペット保険について述べてみた

今年も既に一ヶ月が経過しました。

先月だけで僕個人が担当した誤食によるオペが2件、催吐処置対応が5、6件と誤食祭りを経験しました(苦笑)
(ちなみに病院全体ではオペが+2件、催吐処置は数えるのが面倒なほどありました)

2月に入っても早速1件、内視鏡による摘出オペを受けた犬がいます。

誤食はその内容によって緊急性などが変わってきます。
チョコなどの中毒性の物であれば、なるべく早く催吐させる必要がありますし、消化しない異物(プラスチックとか金属など)の中には催吐処置では排出できないものもあります。

後者の場合は、内視鏡で摘出するか、できなければ開腹手術で摘出することになります。

内視鏡だけで摘出できれば翌日退院も可能ですが、腸管を切除するような大掛かりなものについては入院日数も増えます。

現在勤務している病院では、内視鏡で摘出し翌日退院のパターンで費用は大体15万円程になります(検査費・入院費込)。
一方で、開腹手術となった場合は、20万円〜40万円と幅が出てきます(オペの内容による)。

この金額を一括精算していただくことになる為、一般的な家庭であれば大きな負担であると思います。

こういった不測の事態に備えるのが「ペット保険」になります(正直、このパターンは飼い主が気をつければ済む話ですが・・・)。

今回はペット保険について個人的な見解を述べていきます(個人の意見ですので、最終判断はご自身でしてください)。

ペット保険は必要なのか

普段の診療の中でも、若いペットを飼われている方から「ペット保険に入った方が良いですか」という質問はよく受けます。

ペット保険については、僕ら獣医師が特定のペット保険会社を勧めることはないです(少なくとも内の病院の獣医師にはいません)。

まず、ペット保険に入った方がいい方もいれば、入る必要がない方もいます。

ペット保険に入る必要がない人とはどんな人?

ペット保険の大原則ですが、「不測の事態が起こった時に備えるもの」であって被保険者に利益をもたらすものではないということです。
基本的にペット保険では、掛けた保険金以上にお金が戻ってくる可能性は高くないということです。

この原則を踏まえた上で、ペット保険に入る必要がない人とは、数十万円の支出をすぐに捻出可能な人です。
簡単に言えば、十分な資産がある人はペット保険に入る必要はないと思っています。

ペット保険は、掛け捨てタイプしかないです(2019年1月現在)。
そのため、掛け捨てであるペット保険は、毎月あるいは毎年かける保険金は全て純粋な支出で収益になることはありません。

つまり、保険を使わなければ、保険金を単純に捨てたことになります。

そのため、僕自身がアドバイスするときは、十分な資産の余力があるのであれば、保険会社に支払う保険金に似た金額を積み立てておくことを話しています。
この場合は、病気をせず天寿を全うした場合は、全額個人の資産に変わります。

乱暴に言えば、一回で数十万円ぐらいをポンと払える人ならペット保険はあまり意味はありません。

ちなみに高額になる疾患は?

治療内容として大別すると、オペが必要か必要でないかでまず分かれます。

費用が掛かる治療はやはりオペになります。

例えば、子宮蓄膿症という病気があります。
内科的な治療がないわけではありませんが、基本的に子宮卵巣摘出術を実施します。
オペだけの費用が、小型犬(チワワとかダックスとか)の場合で、大体10万円ぐらいになります(大型犬は10万円超えます)。
ここに検査費、入院費(治療含む)などを加算すると、小型犬でも20万円ぐらいになります。

オペをしない内科疾患で高額になりがちなのは心臓疾患と腎臓疾患でしょうか。

心臓疾患は犬であれば、僧帽弁閉鎖不全症(MR)が多く、MRは基本的に進行していきますので、徐々に内服薬の種類や容量が増えていきます。
特に効果があるピモベンダンは非常に高価な薬です。

動物医療の場合は薬価は動物病院ごとに違います。
あくまで、現在の病院での話ですが、今管理しているMRの柴犬の子は内服薬で月に3万円程度の費用がかかっています。
費用に制限がなかった(社長さんが飼い主さん)チワワの子には月に4万円程の内服薬を処方していました。

MRは終生内服薬が必要になりますから毎月3万円を2年間継続すれば、

3万円×12ヶ月×2年=72万円

と結構な出費になります。

また、猫であれば腎不全が長期化する内科治療になります。

腎不全は皮下点滴などによって脱水を補正することが治療の中心になります。
皮下点滴が1回3,4千円ほどのことが多いと思いますが、これを行うペースは個体差があります。

ペースの速い子であれば3,4日に1回とすると、大体の月に10回で3.4万円となり2年間で

3万円×12ヶ月×2年=72万円

となります。
実際には、途中で治療の追加になったり、血液検査で状況の確認をしたりしますから変動すると思います。

ペット保険に入っておいたほうが良い人

上記の逆の人ですね。

すぐに数十万円単位の費用が捻出できない人は入っておいたほうがいいと思います。

オペをする疾患の中には緊急性が高いものも多く、「明日までに考えてください」とか悠長なことを言っていられない事もあります。
結局のところオペをするか否かの選択に迷う理由は、オペの費用が高額であることが多いです。

こういった時にペット保険に入っていれば、オペの決断をしやすくなります。
事実、オペの話をしたところで「ペット保険は使えますか?」と質問してくる飼い主さんは多く、「使えますよ」とお答えするとホッとした表情になる人が多いですね。

もちろん、ペット保険で全てを賄うことはできませんので、高額な治療になれば自己出費もそれなりにあることも多いですが。

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ペット保険をかける上でやってはいけない事

現実的な話としては、一括で数十万円を支払っても問題ないという飼い主さんは多くないと思います。

その為、ペットを家に迎え入れた段階あるいは迎え入れて少し時間が経過したタイミングでペット保険に加入することになると思います。
(ペットショップで紹介されてそのまま加入する人も一定数いますね)

この場合、若齢の時期から保険に加入するため、最初の保険料はそこまで高価に感じなくても段々と保険負担が大きく感じるようになる方も多いです。
(一般的にペットが高齢になる程保険料は高くなるため)

この時にやりがちなのが保険の途中解約ですね。

ただ、ペット保険の途中解約は基本的にオススメできません。

ペット保険を途中解約するデメリット

病気は基本的に高齢になる程発症しやすく、長期化する傾向があります。

簡単に言えば、これから保険のお世話になるというタイミングにも関わらず、保険を利用できなくなるということです。

普段の診療でも「前まで保険に入ってたのに」みたいなことを言ってる飼い主さんに時々出会います。
「じゃあ止めんなよ」と思いますが言っても仕方ないので、粛々と診療して診療費を請求するだけですが。

この場合は、まさに保険料をドブに捨てた後に診療費を自腹で払うということですね。

そのため、ペット保険をかけるならば、基本的に終生にわたってかけることを前提に考えた方がいいと思います。

ペット保険を途中解約するメリット

生涯にわたって保険を使わなくていいような健康体のペットの場合でしょうか。
これについては、そもそも保険の原理原則の「万が一に備える」の趣旨から逸れてしまいますね。

もう一つは、積極的な治療を希望しない場合ですね。
積極的に治療しないのであれば保険料がかさむことはないでしょうから、保険料を支払っていく意味はないでしょう。

正直、メリットといえるメリットはあまり無いように感じますね。

ペット保険に関するまとめ

ペット保険はペットの命を守るために必要になることがあります。

僕自身は、高額な医療費を理由に治療を断念されたペットを何頭も見てきました。
その中には治療すれば何年も生きられる可能性があった子もいます。

お金があるか無いかで命の長さが決まるという事は悲しいことではあります。
しかし、動物医療が対価を得るサービス業である以上、提供する医療知識・技術に対して対価をいただく必要があります。

だからこそ、「いざ」という時の備えは必要です。
そのためにペット保険に加入することはいい判断だと思います。

ただ、ペット保険を提供している保険会社でさえ利益を追求する企業である以上、加入者が金銭的にプラスになることは期待できません。

必要なことは自分自身の経済状況においてペット保険に入った方がメリットが大きいか、入らない方がメリットが大きいのかをよく考えることです。

ちなみに、僕がこれまでに診療したペットにおいて、一回で請求額した最高額は65万円です。

高度医療を請け負う病院ではなく、一般的な一次病院になります。
高度な医療を実施できる2時診療施設ではさらに費用がかさむ可能性はあります。

ペット保険を駆使したとしても高額な医療費が請求されることもあります。

異物による手術は腸を切らなければ最短で翌日退院する事もあります。
ペット保険は1日請求上限金額が決まっている事も多く、その場合は保険によって賄われる金額は微々たるものになる事もあります。

ペットの管理ができない・金銭的な負担が許容できない人はそもそもペットを家に迎え入れない方が良いのではと思いますが・・・

1月に2件の異物摘出オペを行い、早速2月も1件異物摘出のオペをしました。
ハッキリ言って異常ですね。これだけの頻度で起こることは・・・

異物摂取の事故はペットがする事ですが、我々獣医師は100%飼い主さんの責任だと思っています。
悲しい結末にならないように、日頃から気をつけてあげてください。

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